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医療機器の規格(IEC60601)



医療電気機器に関するEMC規格

IEC60601とは?

IEC60601とは、医療用を目的とした電気機器の基本的性能と安全性を定める一連の技術規格です。 国際電気標準会議が公表しており、第1版は、1977年に公開されました。 それ以降、時代の流れと共に更新されている規格です。
2011年には、それまでの一般規格に加え、約10の副通則と約80の個別規格によって構成されております。
IT機器に関する規格、IEC60950はよく知られていますが、それと比べ医療機器は、 人々の安全に関わる医療現場での使用が想定されているため、IEC60601-1の要求は厳しいものとなっています。
リスクマネジメント(第4.2項)
リスクマネジメントの概要が改訂され、ISO 14971:2007をいかに適用すべきかが明確化されました。 この改訂により、ISO 14971に基づく完全なアセスメントと製造後のモニタリングはコンプライアンスには不要である、 ということが明確化されました。
電気的障害(第8条)
除細動器の安全確保、沿面距離、保護接地、および空間距離など、電気的障害が発生する危険性からの保護に関して、 多数の変更がなされています。設置接続が正常に機能しているかを確認する漏電試験では、新たな限界値が設定されております。 機器電源ソケットを備えた機器については、電源コードをつけた状態での保護接地の試験が義務付けられました。 永久設置形機器に関しては、再接続によって使用者に障害が発生する危険性がある場合には、 電源のロックアウト装置を搭載することが義務付けられました。
機械的障害(第9条)
携帯型機器と不安定性に関する機械的障害の試験においては、機能的試験も含めるよう改訂されました。
対温度試験(第11条)
装着部に関して、温度に関する限界値が明確化されました。オーバーフローに関しては、 基本性能と基本的な安全性を常に確保できるように、機器を設計、デザインすることが義務付けられました。
組み立て(第15条)
機械的強度に関して、「容認不能のリスク」が「基本的な安全性と基本性能」に変更されました。 変圧器の組み立てに関する要求事項はIEC 60601-1第2.0版のものに戻されました。 リチウム電池に関しては、IEC 60086-4(一次電池の場合)とIEC 62133(二次電池の場合)への適合が義務付けられました。

IEC60601-1第3.1版とは?

IEC 60601-1第3.1版は、2005年に公開された第3版で不明瞭または多義的であるとして特定された多くの問題を修正するため、 2012年に公開された規格です。第3.1版では、対温度試験、リスクマネジメント、機械試験、基本性能、および対湿性試験などの内容で、 500近い箇所の変更や項目の明確化が行われました。改訂後の規格、3.1版では、機械的障害および電気的障害に関して、 いくつかの新規格も定義されています。

IEC60601-1第4版とは?

IEC 60601-1-2:2014第4版は2014年2月に発行され、2007年に発行されたIEC 60601-1-2第3版の更新版です。 これは医療用電気機器および医療用電気システムのEMCに関するものです。
この第4版ができた背景は、IEC60601-1第3版の一般的要件に合わせて、 電磁妨害(electromagnetic disturbances)に関連する安全規格を作成することでした。 IEC 60601-1-2以前の規格では、電磁干渉(electromagnetic interference)に関連する安全性の側面が十分に対処できていなかったことが 要因のひとつです。また、イミュニティに関して、第3版と第4版の間には大きな違いがあります。
IEC 60601-1の基礎となる前提は、諸々のリスクの理解、および管理についてですが、これは第3版にて、 患者と機器使用者の双方の防護手段という観点から安全な操作のための電気的性能要件を定義することにより、発展したものです。 概ね、これらの要因が、クリーパージ、絶縁の仕様を決定しました。 また、IEC 60601-1規格の第3.1版は、新しい技術の発展に伴い、それに対応できるように以前のいくつかの定義を明らかにしていることも 留意すべきと提言しております。
第4版のEMC副通則では継続してリスク分析にスポットを当ててますが、 「生命維持」などの機器カテゴリからは遠ざかり、その代わりに「意図する使用環境」を十分に考慮してます。 具体的には、より専門的なヘルスケア、家庭内でのヘルスケア、および「より特殊」な環境を定義しています。 専門的ヘルスケアは、病院や医療スタッフがいる場所での従来的な医用機器の使用を全般的にカバーしてますが、 これらは近年のEMCの課題が、比較的増加している環境でもあり、家庭でのヘルスケアの使用とは、 非医療従事者ユーザーの要件および電気供給が安定していない状況の両方をカバーしてます。 「より特殊」な環境とは、工業地域や放射線治療室を含む非常に高レベルの電磁障害が発生するような環境のための付随的分類区分となっております。

IEC 60601-1-2 第4版

医用電気機器の電磁妨害に関する規格

2014年2月発行の医用電気機器の電磁妨害に関する規格「IEC 60601-1-2 第4版」は、第3版(2007年版)から大きく変更され、 医用電気機器の製造業者への影響が大きい内容になりました。
第3版からの特に大きな変更
リスクマネジメントの要求は、第3版にも含まれてましたが、本文中に具体的な要求はありませんでした。
第4版では、リスクマネジメントの必要性が強調され、規格のさまざまな箇所に具体的な要求が記載されています。
例えば、下記のような要求があります。
  • 合理的に予見可能な電磁妨害によってもたらされるリスクは、リスクマネジメントプロセスの中で考慮する
  • 試験時の構成は、リスク分析、経験、工学的分析、あるいは予備試験によって決定する
  • サブシステムでの試験が許容されるかどうかの決定は、リスクマネジメントプロセスを用いる
  • 製造業者は、個別規格またはリスクマネジメントに基づいて、詳細なイミュニティ合否判定基準を事前に決定する
  • 意図された使用環境が特別な特徴を持つ場合、イミュニティ試験レベルは、リスクマネジメントプロセスで考慮する
  • 無線通信機器の近接に関しては、隔離距離を縮めてより高いイミュニティ試験レベルを適用することや最新の通信サービスに対する追加の周波数での試験を実施することをリスクマネジメントの中で考慮する
標準的なイミュニティ試験要求の変更
環境が、専門的医療施設環境(敏感な機器や激しい妨害源の近くは含まない)、 在宅医療環境(救急車を含めた車両、航空機、船舶などを含む)、及び特殊な環境の 3つに再分類され、 生命維持装置かどうかによる区別はなくなりました。
イミュニティ試験要求は、リスクマネジメントの中で検討の対象となる、いくつかの試験は試験レベルの引き上げ、 範囲の拡大や追加が行なわれています。
特に、無線通信機器の近接に対する評価が追加されています。
IEC61000-4-2静電気試験:接触放電 ±8kV、気中放電 ±15kVまで
IEC61000-4-3無線周波放射電磁界試験:80~2700MHz 10V/m
無線通信機器からの近接電磁界試験:380~5800MHz、~28V/m(パルス変調)
IEC61000-4-4ファスト・トランジェント・バースト試験:繰り返し周波数 100 kHzに変更
IEC61000-4-5サージ試験:信号ライン-接地間 2kV追加
IEC61000-4-6無線周波伝導妨害試験:ISM周波数帯 6V追加
IEC61000-4-8電源周波数磁界試験:30A/m
IEC61000-4-11 電圧変動/瞬停試験:
0.5サイクルの瞬停 瞬停位相角の増加(45°間隔)
0%、1サイクルの瞬停 追加
40%、5サイクルのディップ 削除
ISO7637-2直流電源上の過渡妨害:車載搭載機器 新規要求
IEC 60601-1-2 第4版における試験レベルの主な変更点
第4版の各種試験レベルにおいて要求値が厳しくなっています。
主な変更点の一例を下記、表に示します。
項番内容試験規格要求事項
第3版
(IEC60601-1-2:2007)
第4版
(IEC60601-1-2:2014)
1 静電気 IEC61000-4-2 ±6kV(接触)
±8kV(気中)
±8kV(接触)
±15kV(気中)
2空間放射妨害波IEC61000-4-310V/m(80MHz~2.5GHz)10V/m(80MHz~2.7GHz)
3ファーストバーストトランジェントIEC61000-4-4繰り返し周波数:5kHz繰り返し周波数:100kHz
4電源周波数磁界IEC61000-4-83A/m30A/m
バッテリ駆動機器以外で医療機器に適用されるIEC60601-1の規制から電源を除外することは不可能です。
これは、第3版の患者と操作者の保護の分類で明確になっています。 除細動器の場合と同様に、特に患者と同室の機器対患者と物理的に接触する機器、特に患者の心臓との接触の場合は区別されます。
後者の場合は、IEC60601-1適合品のみが許可されますが、その場合でも、補給障壁と患者との接点において追加の隔離障壁が必要となります。 心臓性用の装置を除外しても、他の用途の絶縁要件は、電源の仕様と性能に影響を与える可能性があります。
同様に、第4版で定義されているイミュニティ要件は、電源設計に影響を及ぼすため、 機器設計者はIEC60601-1第3.1および第3.1版のEMC規格に準拠した医療グレードの電源を選択することが最適です。



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