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光と植物 - 植物工場

植物の光反応

植物の主要な光反応のスペクトルを図1に示す。植物は基本的には光合成1によって成長するが、 その他の重要な光反応に光形態形成がある。 これには弱光反応3、4と強光反応2があり、フィトクロームという色素の働きを介して 種子発芽、花芽分化、開花、子葉の展開、葉緑素合成、節間伸張などの植物の質的変化を誘起する。
植物の光反応

植物の光反応の作用スペクトル

光合成にはクロロフィル(葉緑素)という色素が関わっているが、これは図2に示すような吸収スペクトルを持っている。 これを見ると、赤色(660nm近辺)と青色(450nm近辺)に二つの吸光合収ピークがあり、 この波長が光合成に特に有効であることがわかる。 白色光が葉に当たると赤と青が吸収されて、残りの光は緑が多くなるので葉は緑色に見えるのである。 筆者らの実験によると植物の健全な生育にはこの赤色光と青色光がバランスよく配合されていることが大切で、 光量子束密度の単位でR/B比(赤と青の比率)が10:1あるいは5:1が適切なようである。
一方、光形態形成に関わるフィトクロムは、弱光反応では660nm近辺の赤色光によって活性化され、 730nm近辺の遠赤色光によって不活性化されるという性質を持っている。強光反応では420nm周辺の青色が有効であり、 植物を頑丈に育てるなどの効果がある。
植物の光反応

クロロフィルの吸収スペクトル

栽培光源

植物栽培の人工光源としてはこれまで高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、蛍光灯、LEDなどが使われてきた。 植物工場に対しては最近まで、発光効率の高さから高圧ナトリウムランプが主流だった。 しかし植物に必要な赤色と青色の比率が少ないことと、大量の熱線を発生するため植物との距離を十分に取る必要があり、 したがって多段栽培ができないという欠点がある。 一方、蛍光灯とLEDは熱をあまり発生しないので植物に近接させて照明することができ、照明効率を大幅にアップできる利点がある。
栽培光源
LEDとLD(半導体レーザー)には蛍光灯にない、いくつかの利点がある。 LEDは現在いろいろの波長のものが開発されており、各種照明や信号機、表示板などに用途が拡大している。 植物の光生理の研究にも広く使われ始めている。植物工場への応用も注目されているが、照明設備が高価になる難点がある。 LEDは従来光源に比べて、
  1. 発光波長をクロロフィルの吸収ピークと、光形態形成の強光反応の作用スペクトルのピークにほぼ一致させることができる
  2. 熱放射がない
  3. 小型軽量
  4. 長寿命
  5. 低電圧駆動
  6. 光合成に有利なパルス照射が可能
といういくつかの利点がある。図4に示すように、赤色(波長660nm)と青色(波長450nm近辺)のLEDとLDは偶然ではあるが、 上記1を満たしている。そのため植物による光の吸収効率が高くなり、比較的弱い光でも健全に生育させることができる。 とくに赤色LEDは比較的安価なのと発光効率が30パーセントと高いのが有利である。
光源の発光スペクトル

光源の発光スペクトル

光強度の単位

植物工場を考える場合に光強度の単位を明確にしておくことは非常に大切である。 というのはほとんどの光源は人間用に開発されているので視感度を元にした単位が使われているが、 光合成はこれと何の関係もないからである。例えば、450nmの青色光は比視感度が0.038、つまり、 555nmの緑色光と比べると、同じエネルギーであっても4パーセント程度しか眼には感じない。 植物の栽培に必要な光強度を求めるためには、光合成の特性に合致した単位を使う必要がある。
1秒間に放射される光のエネルギー(単位、W)を視感度で除したものを光束といい、lm(ルーメン)で表す。 1m2の面積に照射される光束を照度といい、lx(ルックス)で表す。人間が感じる明るさは照度で表現され、 視感度が関係していることから心理物理量といわれる。光源の特性はしばしば、 単位立体角(立体角:単位長さの半径の球の表面積に相当する)当りの光束で表現され(光度)、cd(カンデラ)で表す。 1cdは周波数555nm(緑色)の単色光が単位立体角に放射する電力(放射束)1.46mWと定義されている。
さて光合成を始めとする光化学反応は基本的には電子の働きによる。 この電子を励起するのは光量子であるから、光量子のエネルギー単位で光強度を表さないと、 光合成に対する光の効果を正しく評価できないことになる。 1ヶの光量子のエネルギーはhc/λ(h:プランクの定数6.62602876×10-34J・sec、c:光の速度299,792,458m・s-1、λ:光の波長)で、 これを最小単位としてエネルギーのやり取りが行われる。1lmの青色LED光と赤色LED光について、表1を参照。
表1 1lmのLED光と各種エネルギー量
LED波長 量子エネルギー 比視感度 電力 光量子束
470nm 4.225×10-19J 0.091 16.0mW 0.063μmol/sec
660nm 3.009×10-19J 0.061 23.9mW 0.132μmol/sec
μmol(マイクロモル)=10-6×(アボガドロ数)=10-6×6.02×1023で、光量子数は普通μmolを単位として表現される。 植物栽培では光強度として光合成有効光量子束密度(PPFD)という言葉が使われるが、 これは光合成に有効な可視領域400~700nmの光の単位時間、単位面積当たりの量子数を表す。 発光波長λnmのLEDがxmWの光エネルギーを出力する場合の光量子束は次式で求められる。
光量子束=x・λ/119,500[μmol/sec]
LED以外の光源、例えば蛍光灯などを使う場合には、各エネルギー単位間の変換係数が求められている。 例えば蛍光灯は電力(W)単位で出力が与えられる場合が多いが、白色蛍光灯のμmol/sとWの換算係数μmol/s/Wは4.59、 つまり1W=4.59μmol/sになる。

植物工場による人工光栽培のメリット

  • 植物の光飽和点に合った光を照射できる→植物にとって最適な環境をつくりあげ、生産性が向上する
  • 周年生産の実現→露地栽培では難しい季節であっても、植物の計画的な栽培が可能となる
  • 明期と暗期の時間設定が可能→食味を落とさずに、商品価値を高めることができる


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