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周辺への光の影響

住宅内への光の影響

道路、街路、広場などの屋外の照明光が住宅の部屋、例えば寝室などに差し込むと、 居住者の安眠、プライバシーなどに悪い影響を及ぼす恐れがあります。
この場合、居室の窓面照度(Ev)を極力抑えることが望ましく、(一社)照明学会・照明普及会の団地屋外照明調査委員会の報告では、 南側窓面1.5 lx以下・北側窓面は4 lx以下としていますが、現在の集合住宅の間取りを考えると、南北に関わらず、 窓面照度はおよそ2 lx程度に制限することが望ましいといえます。
CIEの障害光の規制ガイドによれば、環境地域に応じた規制値が示されています。(表10)
表10 住宅の鉛直面照度の上限値(lx)
環境区域
E1:自然 E2:田舎 E3:郊外 E4:都市
規制時間帯以外 2 5 10 25
規制時間帯(深夜) 0※ 1 2 5
※公共(道路)の照明の場合は、1 lxまで許容される。

樹木植栽などへの光の影響

街路灯等の光が樹木の育成、落葉期などに影響を及ぼす可能性が考えられるので、 それらの設置については、付近の樹木の種類、器具配光、取り付け場所、点灯季節・時間などを考慮して、 適切な位置に設置することが望まれます。

農作物(水稲)への光の影響

一般に、水稲は短日植物であり、夜間照明によって出穂遅延や稔実障害が生じる場合が考えられます。 その程度は品種や光源によって異なりますが、影響が最も強く現れるのが出穂前20~40日の期間であるといわれています。 出穂遅延は5 lx以上の照度で顕著に認められるようになり、登熟歩合については10 lx~15 lxから低下が見られます。 これらのことを考慮した場合、影響のある期間の照度は5lx程度以下に規制することが望ましいといえます。

昆虫への光の影響

周囲に水田、山林、河川、湖沼等があり、これらの場所から照明施設が見える場合は特に昆虫の飛来が多くなる可能性があり、 注意する必要があります。
この場合、2)照明器具は昆虫の生育地の方向へ光を出さないような配光のものを使用するなどの対策が必要です。

観光客への影響

過度の明るさや、または不適切な色の装飾照明や看板が観光客に及ぼす全体的な影響は、 夜景の美しさが増すのではなく、障害的なものとみなさなければなりません。CIEの障害光の規制ガイド 2)による、 建物の照明及び看板の輝度規制値を表11に示します。
表11 建築物壁面と看板の平均輝度の最大許容値(cd/㎡)
環境区域
E1:自然 E2:田舎 E3:郊外 E4:都市
建物正面の輝度 0 5 10 25
看板の輝度 50 400 800 1000

天文観測への光の影響

照明施設の光が、天文観測に対して影響を及ぼすと予測される場合には、光の影響問題を未然に防ぐような対策が必要です。
具体的には、
1)観測所周辺の照明施設による直接光の影響は、決められた方向への照明器具の漏れ光と輝度を制限することで軽減される。
2)大気中での散乱光(スカイグロー)は広範囲に及ぶ問題で、容易に制御することはできないが、 設計照度をその用途に必要とされる最低限に抑えることで、さらに影響を緩和することができる。
3)低圧ナトリウム照明を用いることで、大気中での散乱光の問題を緩和することができる。IAU(国際天文学協会)のガイドラインでも、
・上方向(空)への光量を規制する。
・低圧ナトリウムランプを使用する。
などの対策検討が述べられています。

光害対策ガイドライン

平成10年3月、環境庁により「光害対策ガイドライン」~良好な照明環境のために~が策定され、平成18年12月に改定されました。
「光害」とは、不適切または過剰な照明によって引き起こされる障害のことを言います。 都市化や交通網の発達で屋外照明が増え、過剰に使用されることが多くなった結果、日常生活やさまざまな活動、 野生の動植物や農作物などに悪影響を与えると指摘されています。
表12 光害対策ガイドラインにおける主な用語とその定義
漏 れ 光 照明機器から照射される光で、目的とする照射対象範囲外に照射されるもの。
障 害  光 漏れ光の内、光の量や方向によって、人の活動や生物などに悪影響を及ぼす光。
照 明 率 光源から放射されたランプ光束の内、照明領域に到達する光が何%であるかを示す割合。
上方光束比 ランプ光束に対する上方光束の比率。
グ レ ア 視野の中にたいへん高輝度なものがあったり、輝度の範囲が広すぎたり、
または極端な輝度対比があるために、目に不快感や疲労、見えにくさを感じさせるまぶしさのこと。

照明器具から照射される光のイメージ

照明器具から照射される光のイメージ

総合効率

省エネルギー性の高い光源及び総合効率の高い照明機器の使用が推奨されます。
ランプ入力電力 総合効率
200W未満 50 lm/W以上
200W以上 60 lm/W以上
注)
●総合効率とは、ランプの全光束を安定器の入力電力で割った値。(lm/W)
●高圧ナトリウム灯、メタルハライドランプなどを推奨。基本的には水銀灯は推奨しない。

照明率

照明率が低いと漏れ光が多くなり、人や動植物に悪影響を及ぼす障害光が多くなります。 そこで、照明率が高くなるような機器の設置が推奨されています。 照明効率は、その設置目的に応じて総合的に評価します。

上方光束比

光害対策ガイドラインでは、照明環境類型(Ⅰ~Ⅳ)とそれにふさわしい上方光束比が設定されており、 照明器具を設置する地域全域(主として市町村単位)に共通の照明環境類型を広域目標として選択します。
表14 地域特性に応じた照明環境と照明器具の上方光束比
環境類型 場所のイメージ 上方光束比
短期的目標 行政による整備
照明環境 Ⅰ 自然公園・里地・田園 0%
照明環境 Ⅱ 里地・郊外 0~5%
照明環境 Ⅲ 地方都市
大都市周辺
0~15% 0~15%
照明環境 Ⅳ 都市中心部 0~20%

グレア及び人間諸活動への影響

街路灯に対する制限値を表15に示します。道路灯などの場合は、JISC8131「道路照明器具」に従います。
表15  照明学会「歩行者のための屋外公共照明基準」における
「グレア制限」の項目(取り付け高さ10m未満のもの)
鉛直角85°以上の輝度※ 20,000cd/㎡以下
照明器具の高さ 4.5m未満 4.5~6.0m 6.5~10m
鉛直角85°以上の光度 2,500cd以下 5,000cd以下 12,000cd以下
※鉛直角85°方向の光度から推定してもよい。
人工光は、主として夜間の人間の諸活動に、人によって異なる多種多様な影響を生ずるため、 関係する多数の人々の受ける影響と光害の抑制手段との間に適切なバランスを維持することに努める必要があります。

動植物への影響の抑制

照明器具の配光・取り付け方の改良や環境側に設置する遮光体などによって、 自然環境を照射する人工光をできるだけ抑制することにより、動植物の生息する自然環境を保護する必要があります。 また、人工光を利用する農業・養鶏業・漁業などの合理的な光害対策も必要です。

照明の時間設計

良好な照明環境を創出するためには、所要照度を時刻に応じて柔軟に調整する必要があります。 また温暖化対策の観点から、時間調光によりトータルでの省エネルギーが図れるように検討する必要があります。
〔 参考文献 〕
1)財団法人国土技術研究センター:道路の移動等円滑化整備ガイドライン(2008)
2)CIE・Pub150:GUIDE・ON・THE・LIMITATION・OF・THE・EFFECTS・OF・OBTRUSIVE・LIGHT・FROM・OUTDOOR・LIGHTING・INSTALLATIONS(2003)


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